「労働基準法および労働安全衛生法」 令和2年度 選択式

問  1〕 次の文中の の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。 

1 使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、労働基準法第96条の規定に基づいて発する厚生労働省令で定める危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、(A)に、行政官庁に届け出なければならない。 

2 最高裁判所は、自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、労働基準法上の労働者に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。 

「上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、F紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、(B)の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がF紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、(C)等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。そうであれば、上告人は、専属的にF紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも 1 割 5 分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働 基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」

3 事業者は、労働者を本邦外の地域に(D)以上派遣しようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、労働安全衛生規則第 44 条第 1 項 各号に掲げる項目及び厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。 

4 事業者は、高さ又は深さが(E)メートルを超える箇所で作業を行うときは、当該作業に従事する労働者が安全に昇降するための設備等を設けなければならない。ただし、安全に昇降するための設備等を設けることが作業の性質上著しく困難なときは、この限りでない。

選択肢 

① 0.7  ②  1  ③ 1.5  ④  2  ⑤  1 月  ⑥  3 月  ⑦  6 月  ⑧  1 年  ⑨ 業務遂行条件の変更  ⑩ 業務量、時間外労働  ⑪ 工事着手後 1 週間を経過するまで  ⑫ 工事着手 30 日前まで ⑬ 工事着手 14 日前まで  ⑭ 工事着手日まで  ⑮ 公租公課の負担、F紙業が必要経費を負担していた事実  ⑯ 時間的、場所的な拘束  ⑰ 事業組織への組入れ、F紙業が必要経費を負担していた事実  ⑱ 事業組織への組入れ、報酬の支払方法  ⑲ 制裁、懲戒処分  ⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担

正答

A:⑬ B:⑯ C:⑳ D:⑦ E:③

解説・補足

A:⑬ 工事着手 14 日前まで

工事着手以後の届出は考えづらいため、着手前の14日か30日かの選択肢になるかと思います。
労働安全衛生法でも、建設業及び土石採取業の事業開始14日前に計画届の提出義務があるので、それと併せて覚えている方も多いと思います。
ちなみに、大規模工事や特定機械等の設置等は30日前なので注意が必要です。

労働基準監督署長は、労働者の安全及び衛生に必要があると認める場合には、工事着手の差し止めや計画の変更を命ずることができることも注意です。

B:⑯ 時間的、場所的な拘束

横浜南労働基準監督署長(旭紙業)事件からの出題です。

この問題は、最後の文章で労働者性を否定されていることを前提に解く必要があることは認識しておきましょう!

文脈から考えるに、空欄には労働者への縛りが入ることが予想されます。
そうすると、「時間外労働」や「制裁」などが候補に挙がりますが、このような細かい内容よりは、「時間的、場所的な拘束」といった広い概念での労働者への縛りがしっくりきますね。

C:⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担

判例文の中で、運賃に関する記述があったことから、「報酬の支払方法」を、労働者であるかどうかの判断で参考にしているように感じられます。また、すでにF紙業の指揮命令下にないと前文で言い切っているので、ここで「事業組織への組入れ」を選ぶよりは、「公租公課の負担」といった会計の独立性といった論点を指摘する文脈の方がしっくりきますね。

ちなみに、問題文中にはありませんが、この判例中では、社会保険料や雇用保険料が控除されていた実績がない旨の指摘があります。
労働者性を判断する際に、これらが報酬から控除されていたかどうかが労働者かどうかの判断基準となりうる事を覚えておくと良いでしょう。

D:⑦  6 月

通常は1年に1回の健康診断という知識に引っ張られて、1年と答えてしまいそうですが、6カ月ですね。その他にも、特定業務や有害業務に従事する労働者に対しては6カ月に1回の健康診断が義務付けられています。併せて押さえておきたいですね。
基本的に健康診断で抑える数値は6カ月が多いですが、雇い入れ時の健康診断においては、健康診断受診後3カ月を経過しないものについては省略できるルールがあります。
注意しておきましょう。

E:③ 1.5

本問の1番の難問だと思います。
もし全く分からない場合は、しっかり推論し、答えに近づきましょう
私の場合、日本人の平均身長が170cmくらいだったのを思い出し、その身長を深さや高さが超えないように基準を作っているのかなと考え、1.5mを選びました。
難問に出くわしたときは、あまり悩まず、自分なりの論理を立てて、回答することをお勧めいたします。